なぜ、飲食店経営者だった私が不動産の世界へ進んだのか。 代表ブログ Vol.02|林 泰弘 なぜ、飲食店経営者だった私が不動産の世界へ進んだのか。 〜飲食と不動産、その間にある見えない壁〜の画像

なぜ、飲食店経営者だった私が不動産の世界へ進んだのか。 代表ブログ Vol.02|林 泰弘 なぜ、飲食店経営者だった私が不動産の世界へ進んだのか。 〜飲食と不動産、その間にある見えない壁〜

店舗開発・コラム

林 泰弘

筆者 林 泰弘

不動産キャリア3年

こんにちは。Forest Estate株式会社、代表の林です。
前回は、私がこれまで11店舗の飲食店を経営してきたこと、そして店を始める喜びだけでなく、経営を続ける難しさや、事業を整理するという決断も経験してきたことをお話ししました。
今回は、その続きです。
飲食店を経営していた私が、なぜ不動産の世界へ進んだのか。
そこには、長年の店舗開発の経験と、仕事を通じて感じてきた、ある疑問がありました。それは、飲食店にとって非常に重要なはずの不動産が、必ずしも飲食店経営者の目線で語られていないのではないか、ということです。飲食店を経営することから、店をつくる仕事へ。私は、自ら飲食店を経営する一方で、店舗の企画や開発にも携わってきました。
お店をつくる仕事は、とても奥が深いものです。どの街に出店するのか。どんなお客様に来ていただきたいのか。どのような商品を提供し、どんな価格帯で勝負するのか。店内はどのような雰囲気にするのか。そして何より、その事業を継続できる仕組みになっているのか。飲食店の開発は、これらを一つずつ組み立てていく仕事です。
私は、この仕事がとても好きです。何もないところから、少しずつ形をつくっていく。頭の中にある構想が、現実の店舗になっていく。そして、そのお店にお客様が訪れ、街の一部になっていく。飲食店を経営していた頃とは、また違った面白さがありました。
一方で、さまざまな企業やブランドの出店に携わるようになると、それまでとは違う視点も身についてきました。それが、不動産をどう捉えるかという視点です。良い物件と、良い出店は、同じではない。不動産の世界では、駅からの距離、面積、賃料、建物の状態などが、物件を評価する際の重要な指標になります。もちろん、どれも大切です。
しかし、飲食店の出店を考えるとき、それだけで判断することはできません。例えば、駅から近く、人通りも多い物件があったとします。一見すると、とても魅力的です。
しかし、その物件の賃料が高く、想定する客単価や席数では採算を合わせることが難しいとしたら、どうでしょう。不動産としては魅力的でも、飲食店としては必ずしも適切な物件とはいえません。逆に、駅から少し離れた場所でも、地域のお客様との相性が良く、適切な賃料で長く経営できるのであれば、そのお店にとっては非常に価値のある立地かもしれません。
つまり、良い物件と、良い出店は、必ずしも同じではないのです。
飲食店に必要なのは、単なる不動産情報ではありません。その場所で、どのような商売が成立するのか。その業態に適した設備が整っているのか。投資額と売上のバランスが取れるのか。そして、長く続けていけるのか。そこまで考えて、初めて物件を評価できるのではないかと思います。
私が不動産に強い関心を持つようになったのも、こうした経験が積み重なったからでした。海外で学んだ、不動産のもう一つの側面。私の経歴には、少し変わった経験があります。
コロナ禍の時期、東南アジアへ渡り、不動産ディベロッパーのもとで仕事をしていたことです。そこでは、街づくりや事業計画、契約、交渉といった実務に携わりました。それまでの私は、主に飲食店をつくる側、経営する側の立場で仕事をしてきました。
しかし、不動産開発の仕事では、物事を見る視点が大きく変わります。一つの店舗だけではなく、建物全体をどう活用するか。一つの区画だけではなく、周辺の街にどのような価値を生み出すか。そして、さまざまな関係者の利害をどのように整理し、事業として成立させていくか。不動産というものを、より広い視点から考える機会になりました。
飲食店を経営していた頃は、物件を「借りる側」として見ていました。一方、不動産開発の仕事では、貸す側、開発する側、投資する側にも、それぞれの事情や考え方があることを学びました。この経験は、現在の私にとって大きな財産になっています。飲食店経営者の気持ちが分かる。
しかし、それだけでは十分ではありません。不動産の所有者や事業者にも、それぞれの立場があります。両者の考え方を理解し、その間に立って解決策を考える。その重要性を、海外での仕事を通じて改めて感じました。
帰国して、改めて感じたこと。
日本へ帰国してからは、飲食企業の新規出店や店舗開発、商業施設への出店支援など、さまざまなプロジェクトに携わってきました。大手ディベロッパーの商業施設リーシングに関わる仕事も経験しました。リーシングというのは、商業施設などに入居するテナントを誘致し、出店に向けた条件調整などを行う仕事です。
ここでも、多くのことを学びました。商業施設の運営者には、施設全体としての計画があります。飲食企業には、それぞれの出店戦略や投資基準があります。そして不動産には、契約上の条件や建物の制約があります。どれか一つだけを優先すれば、必ずしもうまくいくというわけではありません。さまざまな条件を調整しながら、それぞれにとって納得できる着地点を探していく。これが、店舗開発やリーシングの重要な仕事です。
そして私は、このような仕事を続ける中で、あることを強く感じるようになりました。それは、飲食と不動産の間には、想像以上に大きな情報や知識のギャップがあるということです。不動産の常識が、飲食店の常識とは限らない。飲食店経営者は、料理や接客、店舗運営の専門家です。
しかし、不動産契約の専門家ではありません。一方、不動産会社は、物件や契約に関する専門知識を持っています。しかし、飲食店の経営や店舗運営の実態を、すべて理解しているわけではありません。これは、どちらが良いとか悪いとかいう話ではありません。専門領域が違うのです。
例えば、飲食店の出店には、厨房の排気や給排水、電気容量、ガス設備など、一般的なオフィスとは異なる確認事項があります。また、居抜き物件であれば、既存の内装や厨房設備をどのように評価するかという問題もあります。退店時には、原状回復や造作の取り扱いが問題になることもあります。一つひとつは不動産や設備に関わる話ですが、その判断が飲食店の収支に大きな影響を与えるのです。
そして、契約の場面では、専門用語も数多く登場します。普通借家契約、定期借家契約、保証金、償却、原状回復、転貸借。飲食店経営者にとって、必ずしもなじみのある言葉ばかりではありません。
だからこそ、私は思うのです。飲食店の事情を理解したうえで、不動産の専門知識を分かりやすく伝えられる存在が、もっと必要なのではないかと。
【契約はゴールではない。】不動産仲介の仕事では、契約が一つの大きな区切りになります。当然のことです。条件を整理し、関係者と調整し、契約を成立させる。それ自体が重要な仕事です。
しかし、飲食店経営者の立場から考えると、少し違います。物件の契約が終わったところで、お店の経営が成功したわけではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。
内装工事が始まる。スタッフを採用する。メニューを決める。仕入れ先を整える。広告や販促を準備する。そして、開業した後も、毎日の経営が続いていきます。
契約が成立したからといって、事業の成功が約束されるわけではありません。このことを、私は飲食店の経営者として知っています。だから、物件を紹介して契約して終わりという仕事だけでは、私自身が納得できないのです。
もちろん、不動産会社としての専門性や、取引の安全性を大切にすることは大前提です。そのうえで、飲食店経営者にとって、本当に必要なことは何なのか。契約の先まで考える仕事ができないだろうか。そんな思いが、少しずつ強くなっていきました。自分の経験を、一つの仕事にできないだろうか。飲食店を経営してきた経験。店舗を開発してきた経験。商業施設への出店を支援してきた経験。海外で不動産開発に関わった経験。振り返れば、まったく違う仕事のようでいて、すべてがつながっていました。
中心にあったのは、いつも「店」と「人」だったように思います。そして、これらの経験を一つに組み合わせれば、これまでとは違った価値を生み出せるのではないか。そう考えるようになりました。
飲食店の事情が分かる不動産会社。不動産の専門性を持った飲食ソリューション。出店だけでなく、成長、移転、退店、事業承継まで相談できる存在。理想を言葉にすることは簡単です。
しかし、実際にそれを事業として形にすることは、決して簡単なことではありません。それでも、挑戦する価値はある。私はそう考えました。
そして2026年、自ら不動産会社を設立するという、新しい一歩を踏み出しました。
会社の名前は、【Forest Estate株式会社。】
それは、私にとって新たな挑戦の始まりでした。次回は、そのForest Estateの設立と、飲食ソリューション事業「FOREST FOOD WORKS」が生まれた背景について、お話ししたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Forest Estate株式会社代表取締役/FOREST FOOD WORKS 主幹林 泰弘


”店舗開発・コラム”おすすめ記事

  • 年商5億円。それでも会社は苦しかった。 代表ブログ Vol.05|林 泰弘 ――店舗が増えるほど、経営者は自由を失っていった。の画像

    年商5億円。それでも会社は苦しかった。 代表ブログ Vol.05|林 泰弘 ――店舗が増えるほど、経営者は自由を失っていった。

    店舗開発・コラム

  • 仙台で勝った男、東京へ。成功体験が招いた落とし穴。 代表ブログ Vol.04|林 泰弘の画像

    仙台で勝った男、東京へ。成功体験が招いた落とし穴。 代表ブログ Vol.04|林 泰弘

    店舗開発・コラム

  • 会社は、一人ではつくれない。私が仲間と実現したい未来。 代表ブログ Vol.03|林 泰弘 会社は、一人ではつくれない。私が仲間と実現したい未来。 〜FOREST FOOD WORKSを立ち上げた理由〜の画像

    会社は、一人ではつくれない。私が仲間と実現したい未来。 代表ブログ Vol.03|林 泰弘 会社は、一人ではつくれない。私が仲間と実現したい未来。 〜FOREST FOOD WORKSを立ち上げた理由〜

    店舗開発・コラム

  • 11店舗を経営して、私が知ったこと。 代表ブログ Vol.01|林 泰弘  11店舗を経営して、私が知ったこと。 〜店を始める喜びも、手放す痛みも知っているから〜の画像

    11店舗を経営して、私が知ったこと。 代表ブログ Vol.01|林 泰弘  11店舗を経営して、私が知ったこと。 〜店を始める喜びも、手放す痛みも知っているから〜

    店舗開発・コラム

もっと見る